いま、多くの人が、「日本、ヤバくね?」と感じているのではないだろうか。
政治、メディア、経済、医療、教育、福祉・・・
さまざまなところに憤りや不安を感じている人は、多いと思う。
もちろん、そういう私もその一人だ。
そんななか、とても興味深い本に出合った。
『シン・スタンダード』(谷口たかひさ著・サンマーク出版)
おもしろい、これはおもしろい。
本を一気に読み終えたのは久々だ。
ジャンルとしては、「日本論・日本人論」ということになるだろう。
世界中を歩いた著者が、そこで見聞きしたことをもとに、日本の常識に鋭く切り込む。
目からウロコ、心はほっこり。
刺激的なのに健康に良い、まるで“生姜”のような本!
谷口たかひさ氏について
著者の谷口たかひさ氏は、1988年生まれとあるから今年(2024年)で36歳。
10代で起業したり、イギリスに留学したり、ドイツで起業したり、世界80ヶ国を渡り歩いたり、現在は環境問題や政治問題などで発信したり、講演したり、さらにはInstagramで11.8万人のフォロワーを持つなど、なんというか超絶マルチな人だ。
私もInstagramで知って、ハッとする切り口の文章にいつも刺激をもらっている。
つい先日、はじめてインスタライブも見たが、優しそうな明るい青年といった印象。
あと、けっこうな男前。
「価値観の選択肢」を増やす
「日本の常識は世界の非常識」と昔からよく言われるが、本書では48の実例を挙げて論じている。
堅苦しさはまったく無く、文章もすっきりとして読みやすい。
著者は、「イントロダクション」のなかで、<「世界の常識」と「日本の常識」を比較した>理由についてこう述べている。
なぜ、そんなものを知る必要があるか?
(本書7-8頁より)
それはそうすることで、日本人の根底にある「価値観の選択肢」を増やすことができるからだ。
たったひとつしかないケーキから、自分の好きなケーキを見つけるのは不可能である。なぜなら選択肢がひとつしかないから。それを正解と思うしかない。
しかし、それが、3つ、4つ、5つと選択肢が増えていくことで、精度の高い「比較」が生まれ、自分の「好き」の解像度は上がっていく。
同じように、海外の文化や常識、または政治や環境問題への取り組みを知ってもらうことで、きっと自分が大事にしたい「価値観」に対する解像度は自ずと上がっていくはずだ。
たしかに、複数の選択肢を「比較」できることは、とてもたいせつなことだ。
「自由」にも「幸福」にもつながってくる。
日本人が“疲れて”しまっている理由のひとつは、狭い視野のなかで生きていることかもしれない。
日本人は時間に厳しくない!?
いろいろ心に残る言葉があったのだが、いちばん印象深かったのは、著者が<日本で働いているヨーロッパ出身の友達>に言われたという言葉だった。
「日本人は時間に厳しいと言うけれど、あれウソだよね。始まりの時間は守るけど、終わりの時間は守らないじゃん」(本書63頁より)
たしかに!
ヨーロッパには「残業」という言葉がないと聞くが、ダラダラと就業時間を超えて働く(働かせる)あり方は、時間にルーズと言われても仕方あるまい。
「残業」も日本独特かもしれないが、「単身赴任」はどうなんだろう?
子どもが生まれたばかりだろうが、たくさんいようが、父親が単身赴任させられるケースは日本では珍しくない。
子どもにとっても、母親にとっても、父親にとっても、だれにとっても何一つ良いことはないと思うのだが。
私がスイスの電車で見た光景
子どもが公共の場で泣いて愚図る話も出てきたが、読みながら、かつてスイスの登山鉄道に乗ったときのことを思い出した。
美しい緑の山を、ゆっくりと列車が上っていく。
車内は、ほぼ満席。
うしろの方の席で、4~5歳くらいの男の子が駄々をこねていた。
と突然、「パン、パン、パン」と、子どものおしりをスパンキングする音が響いたのだ。
私は大きな音に驚いたのだが、さらに驚いたのは周囲の反応だ。
だれひとり驚くふうでもなく、気にするふうでもなく、みな静かに平然としている。
まるで、「子どもをああやって厳しくしつけるのは当たり前」と言わんばかりに。
いまの日本で同じことをすると、動画を撮られたり、SNSで拡散されたり、「視聴者スクープ」でニュースにまで出されたりするかもしれない。
文化の違いを感じた瞬間だった。
なんだかかっこ良く感じました
中高生や子育て世代におすすめ
話を戻す。
本書を読みながら、自分自身も多くの「常識」に囚われていることに気づかされた。
そして、そこに気づくだけで気持ちが少しラクになるのを感じた。
刺激的でありながら、心身に良い、まるで“生姜”のような本、と私が思ったのはそういう意味だ。
本書は、何が正しいということではなく、こういうあり方もあるよ、こんな幸せもあるよ、と「選択肢」を見せてくれる。
冒頭に書いたように、いまの日本人の危機感・閉塞感は、けっこう来るところまで来ている気がする。
それを考えると暗い気持ちになってしまいがちだ。
しかし、著者の谷口さんは、だからこそ自分に何ができるかを考え、むしろ「ワクワク」しているという。
中高生や子育て世代の方に、特におすすめしたい一冊だ。
まとめ
『シン・スタンダード』感想まとめ
- 著者が世界中を渡り歩いた経験から世界と日本の常識を比較する
- 「価値観の選択肢」を増やす大切さ
- 読みやすいつくりで一気に読める
- 刺激的かつ健康的
- 若い世代に特におすすめ