妻からすすめられて、NTTクレドホール(広島市中区)で開催された
香取慎吾個展『WHO AM I』
を見てきた。
先に見に行った妻は帰って来るなり、
「すごかったけど、慎吾ちゃん、病気なんじゃないかと心配になったー」
と言っていた。
「慎吾ちゃん」を小さい頃から知るからこその、ファン心理なのだろう。
ぼくはSMAPの曲をよく車で聴いたりするくらいの“一般ファン”だが、慎吾さんが平和公園を訪ねたニュースなどを見て、今回の個展、行ってみたいと思った。
闇と光がテーマ
今回は、“「闇」と「光」”がテーマになっているという。
慎吾さんが、自分の内面を包み隠さずさらけ出していることが想像される。
チケットをもぎってもらって、中に入る。
ゴーという独特の音響、薄暗い照明、迷路のような順路。
強烈なインパクトのある作品たちが、そこにあった。
大きなもの、小さなもの、段ボールに描いたもの、立体的なもの・・・
その数と多彩さに驚く。
そして何といっても印象的なのは、原色をふんだんに使う色使いだ。
たしかに「闇」の絵ではあるが、散りばめられた原色のせいか、どこか明るさを感じさせる。
「はぁ~、すごい才能じゃねぇ。」
「これ見てみんさい、よぉこんな絵が描けるねぇ」
気づくと、意外にも年配のお客さんが多く、みなさんしきりに感心しておられた。
描かずにはいられない
絵の中に「目」がよく出てくるのは気のせいか。
ときには、たくさんの「目」が自分(らしき者)を見つめている。
子どもの頃から常に大衆の注目を浴び、「SMAPの香取慎吾」であり続けた自分を表しているのか。
超多忙ななかで、よくこれだけたくさんの作品を描けたな・・・
と率直に思うが、
描かずにはおれなかったんだろう。
描くことで、自分をギリギリ保っていたのではなかろうか。
以前、ビリー・ジョエルが、音楽を学ぶ学生たちにこう語っていた。
「真のアーティストは表現したくてしたくてたまらないんだ。他人の評価など気にしない」
慎吾さんの絵を見ながら、ぼくはこの言葉を思い出していた。
ひとが良いと思うかどうか、そんなことはどうでもいい。
とにかく、描かずにはいられない。
表現せずにはいられない。
慎吾さんの絵は、上手いとか下手とか、構図がどうとか、技術がどうとか、そんなところを超越しているように見える。
だから、圧倒される。
この感覚はピカソや岡本太郎の展示を見たときと似ている、と思った。
「君はちっぽけな枠のなかで、チマチマと生きていないか?どこかカッコつけて、上辺だけ取り繕っていないか?」
そんなふうに迫られているような感覚。
自由に内面をぶつける
多くの作品が「Non Title」になっていた。
慎吾さん自身、インタビューで、
「テーマを決めずに描くのが好き」
と語っている。
縛られずに、自由に、内側のものをキャンバスにぶつける。
そんな感じだろうか。
いったいどんな場所で、どんな顔をして描いたのだろう。
そんな思いが、何度もよぎった。
いろんな表情があったに違いない。
「光」のゾーンに入った。
途端に明るい照明になり、詰まっていた息が一気に開放される。
「光」の作品ではあるが、どこか切なさも感じさせる。
「闇」と「光」、二元的であって、二元ではない。
それが面白い。
最後の部屋は、撮影OKとなっていたので、いくつか撮れた。
今回の広島展に向けて描かれた「広島サンセット」。
めちゃくちゃ、いい。
オリジナルキャラクター(?)の「くろうさぎ」。
ひと通り見終えて、自分の内面をこれほどに表現できる、そのパワーに圧倒される思いがした。
これからも、まだ見せていない「香取慎吾」を見せてくれるのだろう。
またひとり、目を離せないひとができた。