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2024年広島本大賞ノミネート作品『厳島』(武内涼著)が凄い!おぞましいまでの元就の策略ぶりに何度も鳥肌が・・・

07/13/2024

『厳島』本の表紙

2024年広島本対象にノミネートされたと知り、

『厳島』(武内涼著/新潮社)

を読みました。

これほど「終わらないでくれ」と願いながら読んだ本も珍しい。

それくらい幾度となく鳥肌がたち、胸を熱くし、読後の放心がしばらく続きました。

ネタバレしない範囲で、

を書いておきます。

キビタン
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どんな小説?

『厳島』は、どんな小説なのでしょうか?

「厳島の戦い」を描く作品

この小説は、戦国時代の1555年に起きた「厳島の戦い(厳島合戦)」を描いた作品です。

「厳島の戦い」は、

毛利元就軍 vs. 陶晴賢(すえ・はるかた)軍

で争われた戦いで、この勝利を機に毛利元就が中国地方の大大名としてのし上がっていきます。

アマゾンの本の紹介には、次のように書いてあります。

“戦国三大奇襲”に数えられる「厳島の戦い」。兵力わずか四千の毛利元就軍が二万八千の陶晴賢軍を打ち破った名勝負の影には、壮絶な人間ドラマがあった。謀略で勝利した元就と、義を貫いて敗れた晴賢……対照的な二人の武将を通して人間の矜持を問う! 

弱者の戦法

紹介文にあるとおり、両軍の兵力には大きな差がありました。

  • 毛利軍/4千
  • 陶軍/2万8千

単純計算で「1:7」、つまり毛利軍1人で陶軍7人を相手にする数です。

この状況で、毛利軍はどうすれば勝てるのか?

結果的には毛利軍の圧勝に終わるわけですが、そこに至るまでの「元就の謀略の巧みさ」が本小説をおもしろくする柱のひとつです。

ただ一度の奇襲で――陶の首を取らねばならぬ。どうすれば、よい?どうすれば討てる?考えろ、考えろ、考えろ――。
(中略)考えろ、考えろ、が若き日の口癖だった。

(本書21頁より)
キビタン

魅力あふれる人物像

先の紹介文では元就と晴賢の「二人の武将を通して」となっていますが、実際には晴賢側家臣の知将・弘中隆兼も主役級の重要人物です。

元就の術中に陥っていく晴賢を、なんとか食い止めようとする隆兼。

元就vs.隆兼、二人の知恵の対決もまた、この小説のおもしろさを引き立てます。

隆兼と息子・隆助の麗しい親子関係をはじめ、多くの人物が織り成す人間模様が魅力的に描かれます。

新潮社の公式サイトに掲載されている吉川晃司さんの書評には、つぎのようにあります。

・・・読みながら、ずっと胸のザワつきが止まりませんでした。元就さんにも、一方の陶晴賢軍の知将である弘中隆兼さんにも、どちらにも深く感情移入しました。追いつめていくほうも、追いつめられていくほうも辛い。双方のヒリヒリするような思いが伝わってきました。

魅力的な人物だからこそ「深く感情移入」してしまう・・・

すごくわかります。

キビタン

広島本大賞にノミネート

『厳島』は、2024年広島本大賞にノミネートされています(2024年7月現在)。

【公式】広島本大賞さんのポストより

新潮社出版部文芸さんのポストより

なお、今回の広島本大賞には11作品がノミネートされており、8月下旬に大賞が決定されるそうですよ。

キビタン

どんな人におすすめ?

『厳島』はみなさんに読んでもらいたい小説ではありますが、特につぎのような人におすすめしたいです。

歴史小説が好きな人

これは言わずもがなですね。

私はもともと歴史小説家・葉室麟さんの大ファンなのですが、またひとり、注目したい作家さんと出逢えてうれしいです。

武内涼さんは1978年生まれということですから、今年で46歳。

これからますますご活躍されることでしょう。

要チェックです!

広島の歴史を知りたい人

私は広島に生まれ育ちながら、毛利家についてあやふやな知識しか持ち合わせていませんでした。

毛利元就は非情な采配をふるいながら、息子たちをうまくまとめて大大名になっていった――、という程度の印象。

今回『厳島』を読んだおかげで、ずいぶん輪郭がはっきりしました。

大内氏、尼子氏との関係や、息子である吉川元春、小早川隆景、さらには村上水軍がどういう立ち位置だったのか。

小説ですから脚色はあるでしょうけど、これまでのような漠然とした印象ではなくなりました。

また、宮島はもちろんのこと、岩国、廿日市、吉田、吉和など、広島人にはお馴染みの土地がたくさん出てきます。

だから、親近感をもって読むことができました。

宮島に旅行する人

いま宮島は、外国人も含めて旅行者がたくさん来ています。

これら旅行者のみなさんにも、ぜひ読んでおいてもらいたい一冊です。

というのも、現在のフェリー降り場から商店街、厳島神社あたりの、旅行者がかならず訪れるわりと狭い地域が激戦の舞台になっているのです。

読んでおくと、宮島を見る目もまた変わると思われます。

弱者の戦法を学びたい人

前述のとおり、厳島の戦いは、

  • 毛利軍/4千
  • 陶軍/2万8千

という大きな兵力の差のなかで戦われました。

そして、陶軍の7分の1の兵力しか持っていなかった毛利軍が見事な奇襲戦を仕掛けて圧勝したのです。

見事だったのは奇襲攻撃だけではありません。

この戦いに至るまでの元就の周到な計画、準備があり、そこがこの小説のおもしろさになっています。

「考えろ、考えろ」が口癖だった元就が、いかに考え抜いて準備を重ね、思惑通りに陶軍を厳島の戦いに引き込んでいったか――

この小説を読むことで、「弱者がいかに勝つか」という“弱者の戦法”を学ぶことができるでしょう。

まとめ

  • 小説『厳島』は「厳島の戦い」を描いた作品
  • 毛利元就の策略家ぶりに鳥肌が立つ
  • 弘中隆兼ら魅力的な人物も多く登場
  • 「2024年広島本大賞」ノミネート作品
  • 歴史好き、宮島旅行を計画中の人におすすめ

以上、小説『厳島』について、ざっとご紹介しました。

先日、ゆかりの地をいくつかまわって来たので、近々そのレポートも書きますね。

キビタン

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